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目指しているのは「究極の一粒」。
ホテルマンからいちご農家へ。Iターン先に高野町を選んだ理由

ナチュラルファームタニグチ

谷口博紀さん

きっかけは「日本一のいちごを作っちゃる!」

谷口博紀さんは、広島市東区出身。大久野島でホテルマンとして長らく働いた後、2014年に高野町へ移住、いちご農家に転身して7年になります。谷口さんが農業に興味を持ったきっかけは、2011年に起こった東日本大震災。「今まで、食べ物は安心・安全で当然と考えていましたが、あの震災以来、食の安全について考える機会が増えたんです。

考えるうちに、『安心できる食べ物を自分で作りたい!』という思いが強くなって…2011年7月には『ホテルマンをやめて、農業をしよう!』という結論に達しました(笑)」

とはいえ、農業は未経験の谷口さん、まずは庄原市東城町の「ドリームファーム」という農業法人に就職し、3年間研修を受けることに。「ドリームファームは、収入を得ながら農業技術を身に付けることができる場所。そこではホウレン草やいちごを栽培していました」

ドリームファームで谷口さんに農業のノウハウを教えてくれた「師匠」は、「夏場のいちごを、ちょっとでも甘くしたい」という目標を持っており、機会あるごとに谷口さんにそのことについて語っていたそう。「『夏に食べるショートケーキのいちごって、酸っぱくて甘くないでしょ?そのいちごを冬場と同じくらい甘くしたい』って、師匠は言っていました。でも、他の農家さんは『夏のいちごをちょっとくらい甘くしたところでなんも変わらん』って言うんです。その言葉を聞いたときに、『じゃあ俺が、師匠のために日本一甘いいちごを作っちゃる!』と心に誓ったんです」

師匠の目標をかなえたい…それが谷口さんがいちご栽培を始めたきっかけ、というわけです。

高野町とは「運命の出会い」。

いちご農家に転身を決めた谷口さんが、最初に始めたこと…それは、農地探し。「夏のいちごは標高が高くないと美味しく育ちません。そこで、広島県内の色々な高地を回ってみたんですが、農業未経験だったため、なかなか農地を得ることができませんでした。

そんな中、高野町は、快く農地を紹介してくれたばかりか、住まいまであっせんしてくれたんです」高野町を訪れてから物事がトントン拍子に進んだ谷口さん、「自分はもう、高野町で農業をやる運命なんだ」と感じたんだそう。「こうして、高野町への移住を決めたと同時に、交際していた妻とも入籍、夫婦で高野町生活をスタートさせました」ちなみに奥様、ホテルマンをやめていちご農家に転身することも、高野町に移住することも反対しなかったのだとか。「明日何が起こるかわかないんだから、好きなことをしたら?って言われました。この妻の考え方には、すごく勇気づけられましたね」

7年費やして完成した「タカノプリンセス」。進化はこれからも続きます

とはいえ、最初から順風満帆、というわけにはいきません。初年度の年間売り上げは、なんと数万円!完全なる赤字スタートでした。

しかし、谷口さん、「辛いな」「しんどいな」と思ったことは一度もない、と言います。「幸い新規就農者は、5年間補助がもらえるので、その期間に色々試して、ダメだったら諦めよう、と腹をくくっていました。そう思ったら吹っ切れたというか、やるだけやろう!と思えたんです。5年間は、美味しいいちごを作るために、さまざまな果物や野菜の農法を試してみました」こうして試行錯誤を繰り返すこと7年間。ようやく納得のできる糖度の夏いちご「タカノプリンセス」が完成しました。

「最初の目標より2年オーバーしましたが、ようやく手ごたえを感じることができました。とはいえ、夏いちごの栽培はまだまだ奥が深い。雪深いおかげで美味しい水が流れる、という高野町の地の利を生かしながら、日照管理やCO2濃度、湿度など工夫し、これからも進化を重ねていきたいですね」

「究極のひと粒」で高野町をアピールしたい!

ホテルマン時代から、常に「お客様の立場に立って物事を考える」ことを意識してきた、という谷口さん。その仕事への姿勢は、いちご作りにも通じるところがある、といいます。

「レストランやパティスリーなど、お客様によって、求めるいちごは異なります。そのため、相手の需要を満たすいちごを選んでお届けする、ということを常に意識しています」その甲斐あって、今では、県内有数のホテルやこだわりのレストランなどから「いちごはタカノプリンセスしか使用しない!」という声が上がっているのだとか。

「私の目標は、『究極の一粒』を作ること。そのために、これからもどんどん新しいことに挑戦して、いちごの可能性を最大限に引き出していきたいと思っています。そして最終的には、私のいちご「タカノプリンセス」で高野町を全国へアピールしていきたいですね」

四季が美しく人が優しい高野町、どうぞ安心してきてください。

ここで、谷口さんに、高野町の印象をお伺いしました。

「高野町は、四季がはっきりしている場所。冬は雪がどっかり降って、星がきれいですよ。稲穂が実る、9月の田んぼの景色も好きですね」また、高野町の果物の美味しさは格別!とも言います。「朝晩の寒暖差がしっかりある高野の気候は美味しい果物を育てるのにピッタリで、夏いちごはもちろん、りんごなども美味しく育つんです」

最後に、移住を検討している人に、谷口さんからメッセージ「子育て世代にとっては自然豊かな高野町はとても魅力です。町全体で子どもを可愛がってくれる風潮があり、子育て支援なども充実しています。また、年を重ねてもみなさんしっかりと働いていて、生き生きとしている印象です。リタイア世代の方も、支え合いながら暮らしていける場所なのではないかな、と思います。地域の人たちも優しく受け入れてくれるので、どうぞ安心して来てくださいね」