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高野の豊かな自然に魅了されて20年…カフェから望む雪景色は絶景

カフェ風の里・ブルーベリー農園

熊川和幸さん

ふと訪れた高野の自然に惚れ込み移住を決意

現在70代の熊川さんは50代の頃に高野町へIターンされました。ご自身のカフェ「風の里」で訪れた方にコーヒーをふるまう傍ら、カフェに隣接する農園でブルーベリーを栽培されています。そんな熊川さんが高野町へ移住されたきっかけは、なんと“思いつき”であったそうです。

「たまたま高野にドライブ旅行で来たときに、いいところだなと思って、1回来ただけで住もうと思いましたね。私は当時、広島市で設備の設計関係の職場で仕事をしていたのですが、世の中や社会の流れの変化に疲れたなと感じる時期でもあって…。そんなときに高野を訪れて、都会とは異なる時間の流れ方や自然の魅力に取りつかれたんです」

熊川さんは、奥様とお母様とともに移住されました。ご家族は熊川さんのご決断をどう思われたのでしょうか。

「高野に行くと私から聞いた妻は、はじめは腹を立てていましたね。私も妻も実家は高野ではありません。知らない土地に行くなんて普通では考えられないことでしょうから。母も福岡出身で街暮らししか知らなかったから、高野にくることを嘆いていました。ですが今は、妻はすっかり高野町に馴染んでいます。ここに来て結果的に良かったんじゃないかな。母も実際に住んで何年かしたら、“ここが一番いい”と言うようになりました」

住まいは自身で古民家を改装! 

熊川さんは高野町で暮らすにあたり、当時の役場に相談して築150年の古民家を紹介していただいたそうです。自身で改装して住居にされました。

「高野町に来たときは、知り合いもツテもまったくなし。ゼロからの生活でした。役場に聞いて、今の家を紹介してもらったんですが…藁屋根で床は抜けているし、壁は剥がれているし、日本昔話に出てくるような家だったんですよ(笑)。歴史があり囲炉裏もあって素晴らしい家ですがね。住みながら3~4カ月かけて私がリフォームしました。お金もないし自分でやらないと。ただそれだけ。けど、やってみると楽しいもんです」

ログハウスを建ててカフェもオープン!ブルーベリー栽培も

熊川さんは、社会福祉協議会にお勤めされながら地域の方々との交流を深め、7年ほど前にカフェ「風の里」をオープンされました。

「古民家を改装した住居とは別に、高齢の母が暮らしやすいよう家を建てはじめたんです。もちろん私自身で。母が元気なうちに完成させる予定でしたが、99歳6カ月で天寿を全うしまして、間に合わなかった。そこで、カフェをしたらどうかと周りからの声もあり、それもいいな、と設計を変更することに決めました」

地域のみなさんの声から生まれたカフェ「風の里」では、熊川さんが淹れたコーヒーと、奥様手作りのケーキを楽しむことができます。

カフェに隣接する農園では、ブルーベリーも栽培されています。

「数年前に、友人からの頼みで50本くらい植えたのがはじまり。それを植木、挿し木をして今では90本ほどになりました。ブルーベリー農園といえるほどの本数ではないですが、旬の時期になると下高自治振興区のイベントで親子連れなどが収穫にきてくれます。剪定(せんてい)はしますけど、肥料をやるなど世話はほとんどしていません。高野の自然の力で育っています」

もちろん味は絶品です。

「うちのブルーベリーは粒が大きい。生で食べるのが一番おいしいですよ。カフェで提供している妻手作りのケーキにも使います。ブルーベリーのケーキは程よく酸味もあって、これもまたおいしいです」

好きな季節も嫌いな季節も「冬」 街中にはない景色が魅力

熊川さんが感じる高野町の魅力についてもお話を伺いました。

「高野は自然の豊かさが魅力。街中とまったく違います。四季がハッキリとしていますよ」

時間の流れ方にも良さがあるそうです。

「高野のような自然が豊かな場所にいると、自分の好きなことや、すべきことが湧いてくるような気がします。街だと、どうしても決められた仕事などで、自分の生活をじっくりと考える時間をとりにくい。でも考えてみれば、本来は自分の時間は100%自分のもの。それを実感できるのが高野のような田舎の素晴らしさではないでしょうか」

高野町での好きな季節も教えていただきました。

「好きな季節も嫌いな季節も、冬。私は寒いのが嫌い。けれど、冬の雪一面の真っ白な世界は本当にきれいで素晴らしいです。空気ににごりがなく、気持ちがいい。それがやみつきになりますね。雪かきもしないといけないから大変ですけど、寒さに耐えて、雪をしっかり楽しんでいます」

暮らしのなかの楽しみも伺いました。

「移住するまで農業をしたことがなかったですが、今は野菜や米を作って暮らしています。自家栽培で自給自足の生活ですね。食物を育てることは有難いし楽しいことだと思います。そう感じられることが高野での生活でうれしい部分。食いっぱぐれもないですしね。そういう意味でも豊かな場所だと思います」

移住を考えている方は、まずは住んでみてください!

最後に、移住を視野に入れている方へ向けて熊川さんからメッセージをいただきました。

「とりあえず住んでみること、が大切かな。覚悟して来いとまでは言いません(笑)。まずは半年でも1年でも住んでみて、人間関係や近所付き合いも含めて“自分がここに住めるかどうか、好きになれるかどうか”を見極めることかなと思います。山が好き、雪が好き、など何かひとつでも“好き”が見つかれば住みやすいところです」

「高野は、移住する意味を自分自身で見出し、自分の住居は自分でなんとかする、そういう心持ちの方に向いている場所。良い家というのは都会と違います。自分で手直しをしながら好きな形にしていく、といった気持ちで来ていただけたら、と思います。空き家ならいくらでもありますよ(笑)」