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農業を基盤に高野の人々に安心を届ける事業を展開したい!

たなか農園

田中 新さん

父のアスパラ農園を受け継ぎ高野町へUターン。将来は「24時間訪問看護ステーション」をこの地に!

横浜・東京から庄原市での暮らしを経て高野町へ…父の大病がターニングポイント

田中さんは高野町のご出身。訪問看護師からジョブチェンジされ、『たなか農園』を経営し、アスパラガスを生産されています。高野町へは横浜、東京、庄原市内での暮らしを経て、2020年にUターンされました。きっかけはお父様の大病です。

「私は次男ですが、10年ほど前から実家を継ぐことは決まっていました。数年前に関東から庄原市内へ戻っていたのですが、高野町へ帰る決断の決め手となったのは父の大病です」

お父様の手術は大成功。その後、高野町に腰を据えることに決められたそうです。

看護師の奥様と小さなお子さんが2人おられる田中さん。ご家族からの反対はなかったのでしょうか。

「以前から、いずれ帰ることは相談していたため家族に大きな動揺はありませんでした。妻は青森県出身で、青森と高野は自然環境が似ているので、居心地は悪くないようです。高野のほうがちょっと雪は多いかな(笑)」

田中さんは、移住後にお父様のアスパラ農園の事業を引き継ぎます。

「はじめは農業を継ぐつもりはなかったんですよ。でも、自分の家のアスパラを食べた方から、“こんな美味しいアスパラは食べたことがない”と言われて感動してしまって…。この味を守らなければならない、と決意しました」

田中さんは、移住後にお亡くなりになったお父様のアスパラを、改良を加えながら大切に栽培されています。

自ら販路を切り開き、父から引き継いだアスパラを全国へ

たなか農園のアスパラは、水にこだわって栽培されています。水道水や川の水ではなく、高野の山々の天然水を使用しているのがポイント。スジがないので皮をむく必要がなく、生でも食べられるほどの甘くて柔らかなアスパラです。2023年の庄原市のふるさと納税返礼品にも抜擢されているのだとか。

そんなアスパラを、田中さんはご自身で販路を切り開いて消費者のもとへお届けしています。

「道の駅や産直アプリ、SNS、ときには自らレストランへ足を運び、魅力をアピールしながら販売しています。私自身が消費者とつながることが楽しいんです。自身の力でアスパラを広めることで、魅力を直接伝えることができるため、非常にやりがいを感じています。より幅広く、全国に届けていきたいですね」

しかし、うまくいくことばかりではありません。

「マーケティングとアスパラの栽培や出荷をすべて行うことは大変です。9棟あるビニールハウスのアスパラを朝と夕2回収穫。選別作業や袋詰め箱詰めを一人で行っているので、大変なことも。様々な失敗もあり、2022年の収穫量は過去最低でした」

それでも、「課題は明確なので、2023年は最高収穫量を目指して全国に父が残してくれたアスパラを流通させたいです。使用する肥料を改良し、さらに美味しいアスパラの栽培にチャレンジします」

アスパラを基盤に、将来は高野町に「24時間訪問看護ステーション」を作りたい

田中さんには実はもうひとつ、「やりたいこと」があるそうです。それが24時間訪問看護ステーションの立ち上げ。高野町へUターンされる前に訪問看護師として働いていたキャリアを活かして、高野町の人々に安心を届けられるような事業を展開したいと奮闘されています。

「訪問看護師の経験から、病院で迎える最期と、自宅で迎える最期は全く違うことに気付きました。自宅で看取ることにおける訪問看護師の役割はとても大きいものです。高野町に24時間の訪問看護ステーションを作ることで、安心してわが家で最期を迎えられるような地域、社会を作りたいと思っています」

田中さんは、自身のお父様をご家庭でお見送りされたそうです。

「父親を自宅で看取りましたが、そのときは居間で地域の方々に手を握られ、穏やかに最期を迎えることができました。私はその感動を知っているからこそ、そういった環境で高野町の皆さんが最期を迎えられたら…と思います」

田中さんは、お父様と過ごされた時間を想いながら、どのようなかたちで地域の方々にも安心を提供できるか、日々考えています。

高野町は自然豊かで野菜が美味しい!ぜひたくさんの方に来てほしい

最後に田中さんに高野町の魅力を伺いました。

「高野町は自然豊かで魅力たっぷりの地域です。野菜も美味しいんですよ。私が住んでいるエリア周辺は民家が少ないのでとても静か。空気も美味しいです」

高野町へ戻られて、お子さんが生まれた田中さん。子育てするうえでも良さがたくさんあるようです。

「子どもたちは自然と虫や動物に触れ合っています。四季をしっかりと感じ、五感を刺激しながら成長できる環境だと思います。都会の喧騒から離れ、“何もないこと”がどれだけ価値が高いものであるかを体感しています」

学校環境も気になるところです。

「高野町では、子どもの個性を尊重した教育を受けられるのではないかな、と思います。生徒数が少ないので、先生方も一人ひとりと向き合っていらっしゃる印象。安心感があります。地域全体で、子どもを我が子のように教育している雰囲気もありますね」

最後に、高野町へ移住を考えている方に向けてメッセージをいただきました。

「困ったらなんでも相談してください!高野町は地域みんながサポートしてくれる地域です。高野町へ多くの方に来ていただけたら、と思います」